top of page
10-35-2921-02-21IMG_9400.jpg

News & Blog

  • 執筆者の写真TOKYO TEA BLENDERS

TEA FOLKS3 益井園 益井悦郎さんのご紹介

更新日:2023年2月19日

TEA FOLKS(ティーフォルクス)は2カ月に一度、2茶園のプレミアム和紅茶を茶園のストーリーとともにお届けする定期便サービスです。

定期便価格で最新版をご希望の方はこちらからお申込みください。

各便のバックナンバー及び個別の茶葉単体販売も行っています。(在庫次第となります)

目次


1.益井園 GABA紅茶(みらい)の特徴

益井園オリジナルの品種「みらい」で製造されたGABA紅茶は本編でもご紹介するとおり茶葉100gあたり510mgの高濃度の自然由来GABAが含まれています。


茶葉自体にはスパイシーな香りが含まれていますが、抽出後の紅茶は緑茶用品種を紅茶にしたときに特有のやわらかく甘い香りがします。渋みもまろやかでストレートでも飲みやすい紅茶です。


GABAはもともと血圧降下作用が注目されていましたが、GABAチョコレートなどでも知られるとおり抗ストレスや睡眠改善でさらに注目を浴びるようになってきています。


受験勉強や独学など、学習時のおともとしても最適です。カカオの割合が高いビターなチョコレートと食べ合わせると、仕事や学習がはかどるのではないでしょうか。

和紅茶の新しい可能性として、機能性(効能)に注目したGABA紅茶をぜひお試しください。


2.益井園のはじまり

益井園は江戸末期に初代が茶園をはじめて以来、昭和の初期まで、桑畑と茶畑がある農園でした。


明治期の富国強兵を支えた二大輸出産業が生糸とお茶でしたが、生糸の販売量が低下するのにしたがって、益井園でも桑畑を茶畑に変えて、戦後の高度成長期に緑茶に特化した農家になっていきました。


そのような中、6人兄弟の末っ子である益井悦郎さん(現園主)が5代目として就農します。



益井園の上空を動画で撮影


3.就農前の海外修行

1956年生まれの益井悦郎さんは就農するまでの間、普通の農家とはちょっと異なる海外経験をつんでいます。


もともと途上国の農業支援に興味があった悦郎さんは、最初の修行としてまずは愛知県の稲作農家で2年間にわたり住み込みで大規模農業を経験しています。


その後、満を持して1977年に派米農業研修生に応募し、ネブラスカ州の農場に派遣されます。


トウモロコシ栽培を主体に飼料用作物をつくっていましたが、この地での1年半は記憶に残っていることがほとんどないほど忙しくて過酷な労働環境だったそうです。


アメリカから帰国後は、いよいよ途上国で力を試したいと考えました。そこで、悦郎さんは青年海外協力隊に参加して西アフリカのセネガル共和国に派遣されます。


2年間の現地での農業普及の活動期間中に、途上国では簡単に人が死んでしまうのをみたことは、自身の価値観や人生観を大きく揺さぶられる経験だったそうです。


また、貧しいながらも大切にされている食後の喫茶の習慣、そしてフランスの植民地ならではのワイン文化にみる消費者への訴求術は、悦郎さんを強く刺激しました。


4.「おひとりさま茶業」で紅茶作り

アメリカとセネガルという全く異なる世界をみてきた悦郎さんが益井園を継いで就農したのが1984年です。


就農直後から益井園という ”シングルオリジン” を意識したお茶の栽培を始めます。その一つが無農薬栽培であり、また、もう一つが紅茶の製造です。


悦郎さんが紅茶作りを始めた1980年代半ばには、日本で商品として紅茶を作っている人はほとんどいなくなってしまっていました。


JAの営農担当の方にお願いをして紅茶作りの参考文献を探してもらったらA4一枚の旧字体の製法をもってきてくれたそうです。それほど紅茶製造の文献も不足していました。


最初の4シーズンは失敗し、5シーズン目くらいでようやく手探りで商品として販売できるようになりました。


当初はほとんど相手にされませんでしたが、今でも贔屓にして頂いている横浜在住の女性が紅茶製造初年度からほめて育ててくれたそうです。


とにかく最初の20年くらいは紅茶販売は低空飛行を続け、作っていること自体が笑われてしまうような状態でした。


そのような中、悦郎さんは摘採から製造、パッケージデザイン、販売まで1人で完結させる「おひとりさま茶業」を生み出していくのです。


5.消費者との交流

益井園のことを、和紅茶のイベントで知ったという方も多いのではないでしょうか。


地紅茶サミット、ジャパンティーフェスティバル、尾張旭の国産紅茶グランプリ、吉田山大茶会、国連大学でのファーマーズマーケットなどコロナ禍では開催が難しいですが、和紅茶の生産者と出会えるイベントでは必ずといっていいほど悦郎さんが出展していました。


イベント主催者に誘われれば、まずは参加してきたのだそうです。


また、日本紅茶協会が主催するティーインストラクター養成研修においても、国産紅茶の講習の回で悦郎さんが先生を務めて日本での紅茶作りについて解説をしていました。


日本での紅茶作りの先駆者として積極的に伝道師として和紅茶の存在を伝え、お客様への訴求術を研究するのが悦郎さんの営業スタンスです。


6.益井園の品種

明治初期に日本の紅茶作りが始まってから1970年代に日本の紅茶が壊滅するまで100年の間、日本の紅茶は高品質で知られていたにもかかわらず、世界の市場では歯が立たなかったということを悦郎さんはとても重く受け止めています。


歴史的背景を踏まえ、良質な日本茶の品種を使って日本でしかつくれない紅茶をつくりたいと考えています。


悦郎さんが就農した時には益井園の茶畑はヤブキタだけでしたが、就農後は新たな品種にチャレンジをはじめました。


益井園のある川根本町青部は山間部で日当たりがわるく冬は土が凍るほど気温が下がるため、栽培できる品種にも限りがあります。


現在の益井園の品種はヤブキタのほかに、香駿、つゆひかり、そして悦郎さんのお気に入りである「みらい」という品種があります。


「みらい」は知られざる品種のようですが、益井園で育てられていた品種「静7132」に悦郎さんのお子さんのお名前である未来を付けた特別な思い入れのある品種です。


1995年から続くRoyal Tasmanian Fine Food Awardsにおいて2021年には みらい が銀賞を受賞し世界に認められる和紅茶になってきました。


みらいは緑茶にも紅茶にも適した品種で、TEA FOLKSでお届けするGABA紅茶もみらいでつくられています。


品種は他にも、さえあかりを育てており今後商品化の予定です。


また、2021年はコロナ禍でイベント活動ができないことから、その時間を使って、明治時代の青部の篤農家が育てていた100年以上前のチャノキを挿し木で植えました。


100年前といえば川根のお茶も輸出用に作られていた時代だそうです。育ってきた苗の若葉をみると現在の茶葉にはみないトゲトゲとした葉の形がみえています。


青部の篤農家はこのお茶にどのような特徴を見出していたのか、数年後に製品化される日が楽しみです。


7.GABA(ギャバ)紅茶とは

GABA(ギャバ・γ-アミノ酪酸)といえば、グリコ社の提供しているGABAチョコレートを想起される方が多いのではないでしょうか。


グリコ社のホームページ(https://cp.glico.com/gaba/)によれば「GABA28㎎(標準5粒)の摂取で事務的な作業による一時的・心理的なストレスを低減します。」と記載されています。


このGABAを最初に商品化したのは日本の緑茶だったということをご存知でしょうか。



記事によれば1984年頃に当時の茶業試験場で、茶葉を嫌気処理(空気に触れさせないこと)することで、茶葉内にGABAが発生することがわかったのです。


外見上は全く変わらないのですが、6時間から10時間の窒素ガス処理で、グルタミン酸がほとんど全てGABA(γ-アミノ酪酸)に変わった新しいタイプのお茶を製造することができるようになりました。その他の成分を調べると、カテキンやカフェインといった成分の含量変動はなく、アミノ酸組成だけが変化したお茶ができた訳で、これを茶業技術協会の大会で発表しました。

また、お茶の製造過程で発生する自然由来のGABAの方が、抽出されたGABAをサプリのように飲むよりも効能効果が高いと記載されています。


実はGABA(γ-アミノ酪酸)を生理的食塩水に溶かしたものと、ギャバロン茶とを比較すると、ギャバロン茶のほうが血圧を下げる効果がはるかに強いです。

ギャバ・ストレス研究センターのホームページによれば、GABAのリラックス効果や血圧低下の効果だけでなく、睡眠の質の向上から学習効果の向上など様々な効果が実験とともに明らかになっています。


8.益井園のGABA紅茶

益井園にGABAの製法が持ち込まれたのは悦郎さんが就農して間もなくのことでした。


実はGABAを生成する過程にある嫌気処理で工場に異臭が発生してしまい他のお茶を作れなくなってしまいます。


そこで、茶工場自体が小さく影響範囲が限られているとみられた悦郎さんのところへ、農協から案件が持ち込まれたのです。全てのお茶商品の製造が終わった後にGABA茶を作れば、農協が買い取ってくれることになりました。


ただやはり、嫌気処理をしたGABA茶は通常のお茶とは異なり、決して美味しいとはいえない味だったそうです。


なかなか一般に受け入れられないため、農協による全量買い取りもなくなってしまいました。


悦郎さんもギャバ茶の製造をやめようとしたのですが、お客さんの中には「益井さんのギャバ茶で健康を維持している」とおっしゃる方がいらっしゃいました。


紅茶作りをしていた悦郎さんは、緑茶ではなく紅茶でGABAの生成に挑戦しはじめます。萎凋のあと10時間以上の嫌気処理をして紅茶作りをしています。


こうして悦郎さんのGABA紅茶作りは30年以上のキャリアとなり、茶葉に異臭がすることなく、みらいをつかったとても美味しい紅茶に仕上がっています。


さらに嬉しいことには、2020年4月に藤枝市の静環検査センターで試験検査をした際には510㎎/茶葉100gの高濃度GABAが検出されています。


これは例えば、GABA紅茶5gをティーポットで抽出した場合25.5mgのGABAを抽出できるということであり、グリコ社のGABAチョコレート5粒=28mgと同等の分量が摂取できると考えられます。


また、天然由来のGABAの方が吸収されて効能が発揮しやすいということは先ほどの津志田氏のレポートにも記載がありました。


健康意識が高まっている海外においてもGABA紅茶は注目を集め始めています。


9.取材後記


益井園はトーマス号が走る大井川鐵道の終着駅である千頭駅から二駅前の青部駅が最寄りの駅です。


川根本町は「吊り橋の国」とタイトルを掲げるほど吊り橋密集地でもあり、益井園に向かう途中でも吊り橋を楽しむ若者たちに遭遇します。


はじめて益井園を訪れるのであればさらに車で30分 県道77号を登ったところにある寸又峡温泉もお勧めです。


寸又峡の大間ダムにかかる「夢の吊り橋」は約90M、高さ8Mの吊り橋で、トリップアドバイザーの「死ぬまでに渡りたい世界の徒歩吊橋10」にも選ばれました。

寸又峡温泉には吊り橋や温泉だけでなく、おしゃれな雑貨屋やカフェがあり1日だけで帰るのはもったいない場所です。


bottom of page