TEA FOLKS(ティーフォルクス)は2カ月に一度、2茶園のプレミアム和紅茶を茶園のストーリーとともにお届けする定期便サービスです。
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1.つしま大石農園 べにふうきの特徴
2024年11-12月号では、つしま大石農園のべにふうきをお届けしています。べにふうきは紅茶用品種として我が国で広く生産されている和紅茶の定番の品種です。しっかりとした渋みとコクが特徴で、芳醇な香りを楽しめます。
2024年11-12月号でお届けしたつしま大石農園のべにふうきは、一般的なべにふうきのイメージとは一味違う味わいです。今年作られた柔らかい芽だけを摘み、萎凋の段階で春の日の光に当てたことで、とても香り高い紅茶になっています。
べにふうきとしては渋みが抑えられており、口に入れた瞬間に華やかな香りが広がる、特徴的な和紅茶となっています。
2.つしま大石農園のあゆみ
つしま大石農園を立ち上げたのは、現在の園主・裕二郎さんのお父様です。農業普及委員として対馬の産業振興を図ったお父様が、裕二郎さんのお祖父様がしいたけを栽培していた圃場を切り拓いてお茶と柚子の木を植えるところから始まりました。
もともとしいたけを選別・乾燥させていた倉庫をお茶工場にし、熊本のお茶農家さんや対馬でお茶を作っていた方が辞めるタイミングで機械を譲受け、手作りで工場を作りました。当初は茶樹の栽培・お茶作りともに試行錯誤が続いたそうですが、改良を続ける中で立派な茶畑になり、また紅茶作りも洗練されました。
対馬は山がちな地形で、イノシシやシカが多く生息しています。しかしお茶や柚子はシカやイノシシの被害が少ないそうです。また、クモやカマキリは茶園の害虫たちを餌としてバランスを保ち、農業において厄介者と見られがちなシカも苦い茶樹には手を出さず、下草を食べてくれる助かる存在だそうです。
このように、つしま大石農園では対馬の自然を活かしながらお茶作りを続けてきました。
3.裕二郎さんの就農
3人兄妹の末っ子の裕二郎さんは、当初農園を継ぐ気はなかったそうです。とはいえ常に対馬のこと、そしてお父様のお茶作りを気にかけており、静岡県に住んでいた時期もお父様のお茶作りを遠くから手伝えるかもしれないという思いもあって食品メーカーで働いていたそうです。
しかし次第に「地域」の重要性を意識するようになり、裕二郎さん自身の生まれは広島ではあるものの2歳のころお父様が長崎県に転勤になったこと、さらにお祖父様とお祖母様が対馬にいるということもあり、自分のふるさとと思える対馬への思いが強くなったそうです。
そして裕二郎さんはつしま大石農園を継ぎ、現在では2代目園主として、お茶作りをしています。
4.対馬でお茶を作るということ
前述の通り、山がちでイノシシやシカが多いという対馬の自然ですが、つしま大石農園では対馬の自然と共存しながらお茶作りをしています。
しかし、対馬でお茶を作る上で、やはり大変なこともあるようです。例えば対馬にはつしま大石農園以外にお茶の生産者はほとんどおらず、お茶の製造機械のメーカーもないため機械のメンテナンスも簡単には依頼できません。
また、他の大きなお茶の産地だとお茶の生産組合があり、茶農家に対してさまざまな支援が提供されることがありますが、対馬の限られた茶農家としてはそのような支援策は期待できません。ただ、独立独歩だからこそ自分の考えだけで行動できる良さもあると裕二郎さんはとらえています。
5.今後の展望
現在栽培している在来とべにふうき、そして釜炒り茶用のおくみどりにひとまずは注力していきたいと、裕二郎さんは考えています。茶園の面積や品種を広げるよりも、今ある茶園により手をかけていくとのことです。
また、2024年、対馬で開催される予定だった地紅茶サミットは台風の影響で2025年12月に延期になりました。大石さんはこの時間をポジティブに捉え、さらに魅力的なイベントになるようにと準備を進めています。
2025年に控える地紅茶サミットも併せて、対馬に根ざし、対馬の自然とともに対馬の産業振興にもとりくむつしま大石農園のお茶作りに、今後も注目です。
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