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TEA FOLKS17 一心園 甲斐鉄也さんのご紹介



2022年9月-10月の第9便では一心園の「たかちほ」と岩永製茶園の「川鶴(在来種)」をお届けしています。お申し込みはこちらから。


1.一心園「たかちほ」の特徴

2.有機栽培にこだわる 一心園のはじまり

3.有機栽培を支える肥料と堆肥

4.これからの和紅茶


1.一心園「たかちほ」の特徴

「たかちほ」はその名前のとおり、宮崎県で育苗された品種です。その品種が生まれた歴史は古く1924年に宮崎県立農事試験場にあった在来実生園から選抜されたもので、1953年に茶農林11号「たかちほ」として農林登録されています。


釜炒り茶の産地である宮崎県の高千穂で広く栽培されることを願って命名されたそうです。釜炒り茶用品種として選抜されたのですが、近年では半発酵茶(ウーロン茶)や紅茶にすると独特の香味を発するということで適性が高いこともわかってきています。(参考:『新版 茶の品種』静岡県茶業会議所)


一心園の「たかちほ」はコクと香りのバランスがよく、食事にも合わせやすい和紅茶となっています。


2.有機栽培にこだわる 一心園のはじまり


一心園は、現園主の父、甲斐一心さんが昭和40年(1965年)頃に宮崎県の高千穂にほど近い、日之影町で茶業に集中し始めたのが茶園としての始まりです。もともと茶畑もありましたが、お米や野菜などを扱う農家だったそうです。


茶工場の裏には一心さんが切り開いた小高い茶山があり、その頂上からは驚くほど美しい茶畑の光景を目にすることができます。


現園主で二代目となる甲斐鉄也さんは、福岡の大学で農学部に通い、卒業後に家業の茶園経営に携わることを決心しました。


その際、実家に帰るときの条件に掲げたのが「化学肥料や農薬は絶対に使わない」ということでした。


先代の頃から、農薬は体にも環境にも悪いことは認識して農薬不使用栽培には何度か挑戦していましたが、そのたびに収量の減少などが発生し、経営的観点から途中であきらめていました。


鉄也さんは、頑固な性格を自認し「やらないと決めたことは、絶対にやらない。除草剤だけは使うといったこともしない」と語ります。


鉄也さんが就農後、実際に無農薬栽培を徹底し、二番茶の頃(夏)には害虫がくるという時期もありましたが、現在では管理ができているそうです。害虫がやってきても、やがてその天敵となる益虫もやってくるのでバランスがとれるようになります。


一方で天災だけはどうしても防ぎようがありません。2022年の9月に九州を襲った大型台風でも畝を削られる被害がでてしまいました。


それでもありのままを受け入れて、災害が出たときは修復をしながら茶園経営を続けています。


3.有機栽培を支える肥料と堆肥


一心園の工場から茶山を上る途中に肥料を発酵させている小屋があります。有機栽培にこだわる一心園ならではの肥料、堆肥づくりをここで垣間見ることができます。


年に一度、土壌分析をして土にどの栄養が足りていないかを調べ、樹勢のためにミネラルが必要だと分かれば、有機のミネラルとしてマンガン、鉄、マグネシウムを肥料としてあげます。


堆肥には野草や土手の草を刈り、熊本の草場からも野草を持って帰ることもあります。秋番茶が終わる11月頃から、草切りをしてカッターで玉砕します。その後、焼酎の工場に焼酎粕を受け取りに行って、袋詰めをした草ともみ殻、焼酎粕を振って混ぜ合わせます。

発酵させて、粉砕し、また袋詰めして・・・と、驚くほどの工程を人手をかけて行っており、「普通の農家さんだったら採算が合わないからやらないでしょう」と鉄也さんは笑います。


しかも、鉄也さん曰く、これらは自己満足かもしれず、本当にそうすることが茶にとって良いことなのか、比較実験をしたわけでもないのでわからないそうです。


ただ、私たちが飲むお茶が、こうして手間暇かけて作られた土の栄養分を吸っていることは確かです。一心園のお茶がもつ風味としてファンの皆さんにその価値が届いていると思います。


4.これからの和紅茶


緑茶はうま味成分であるアミノ酸が必要ですが、一方で紅茶の風味にはアミノ酸が邪魔をしてしまいます。そこで紅茶用品種の畑には施肥をしないことにしていたのですが、少しずつ樹勢が弱まってきたことに気づいたそうです。


現在は、和紅茶ならではの香りがでやすい紅茶をつくるための肥料のあげかたを研究し、春は肥料をあげず、秋に肥料をあげて様子をみています。

和紅茶を作り始めたのは、甲斐製茶園など周辺の生産者さんたちと半発酵茶の作り方を話し合っている中で烏龍茶研究会を立ち上げたことがきっかけでした。先行していた五ヶ瀬の宮﨑茶房が和紅茶の製品化に成功していたのも参考にしていました。


近年では、中国茶風の製造手法を取り入れる生産者グループに同行させてもらい、台湾や中国本土に視察に出かけました。そこでの学びをきっかけに、揉捻機を使うけれどほとんど圧をかけない作り方に変えています。


和紅茶の品種としては、べにふうき、たかちほ、みなみさやか、やまなみ、いずみを商品化しており、香駿を植えたばかりだということです。


また、和紅茶づくりは緑茶づくりで忙しくなるシーズンでもあるため、県内外から紅茶づくりに興味がある人を受け入れています。


基本の製茶方法を伝えたうえで、その人なりのお茶づくりに任せるのだそうです。そうしているうちに、助っ人で入った方がつくる和紅茶にファンがつくこともあるそうです。


小高く美しい茶山で丹精込めて作られた土の養分を吸った茶葉を、鉄也さんの指導をうけた若手茶師が和紅茶を作っています。これからどのような風味の和紅茶がうまれるのか楽しみです。

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