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TEA FOLKS11 月ヶ瀬健康茶園 岩田文明さんのご紹介

更新日:4月5日

TEA FOLKS(ティーフォルクス)は2カ月に一度、2茶園のプレミアム和紅茶を茶園のストーリーとともにお届けする定期便サービスです。


2022年2月-3月の第6便では月ヶ瀬健康茶園の「やぶきた」と中窪製茶園の「べにふうき」をお届けしています。お申し込みはこちらから。

目次

1.月ヶ瀬健康茶園 やぶきた の特徴 2. 紅茶を作り始めたきっかけ 3.月ヶ瀬健康茶園のやぶきた 4.冷涼地だからこその製茶方法 5.熟成の難しさと面白さ

6.産地の役割を果たすお茶づくり 7.お茶で自然環境を表現したい


1.月ヶ瀬健康茶園 やぶきた の特徴

奈良市月ヶ瀬にある、月ヶ瀬健康茶園。その17代目である岩田文明さん。


岩田さんの家は、代々この月ヶ瀬で農業を営んでおり、明治の頃から茶を主体とする農業を行ってきました。茶農家としては5代目になります。


1984年に無農薬無化学肥料栽培を始め、その時から「月ヶ瀬健康茶園」という屋号になりました。有機JAS法が施行された2001年には、有機JAS認証を取得しています。


岩田さんは「茶園も自然環境の一部」と考え、この月ヶ瀬の自然環境のリズムのなかで、茶園の管理から製茶、仕上げ、商品の企画から販売まで、一環して自分たちで行っています。


2. 紅茶を作り始めたきっかけ

大学に通っていた頃、岩田さんは友人から家業について訊かれ、お茶を作っている農家だと答えました。すると「茶農家なのに、なんで紅茶は作らないの?」と言われ、その時に初めて紅茶の存在を意識しました。


それまで、茶農家としては煎茶や番茶を作るのが当たり前というイメージしかありませんでしたが、それをきっかけに「紅茶をつくる」ということを考えるようになりました。

しかし、その時の岩田さんは家業を継ぐことは考えておらず、大学卒業後は有機食品を扱う会社に就職します。


ある時、オーガニック栽培の研修視察でイギリスを訪れた際、オーガニックを認証する団体のミーティングルームで出された紅茶に岩田さんは衝撃を受けました。

おそらくインドかスリランカのオーガニック紅茶だったのだと思いますが、香りやのどごしの良さが今までに感じたことのないものでした。


「こんな紅茶を作りたい!」

そう思った岩田さんは入社後4年で退職し、家業に加わり2001年から手探りで紅茶を作り始めました。


3.月ヶ瀬健康茶園のやぶきた

月ヶ瀬健康茶園では、在来種や、やぶきたなどの実生系。やぶきた、べにひかり、べにふうき、さやまみどりなどを栽培しています。


月ヶ瀬健康茶園がつくるやぶきたの和紅茶はとても爽やかで、熟成した香りの紅茶です。自然栽培、有機栽培など、栽培方法によっても若干淹れ方を変えているそうです。


実は和紅茶の品種の中でも、やぶきた種を苦手とする人は多いのですが、岩田さんのやぶきたは清涼感と爽やかな甘さが感じられる、とても飲みやすいものでした。


紅茶を作り始めてから21年目。

当初は茶葉を機械で収穫しある程度安定した量を作る方法と、少量の手摘みで基本に忠実に作る方法の、二つのパターンで作ってきました。しかし機械と手摘みでは、生産量は実に百倍程の違いが出てきます。


機械で収穫した量の1%ぐらいの量でも、どうにか手摘みのレベルに近づけたい。そうイメージしながら製造方法を工夫し、何度も設備投資を行ってきました。


そうしてようやく2019年頃から、製茶工程において、機械で収穫した量でも少量生産とほとんど変わらないクオリティで、爽やかで雑味がないスッキリとした味わいの茶葉を徐々に作れるようになってきたのだそうです。

岩田さんは、萎凋の精度と揉捻のスタイルが重要だと考えています。

たくさんの量を一気に発酵止めしたいという時に、いかに素早く的確に行うか。最後に、どういう形状で仕上げるか。そういった製造方針を、時間をかけて築き上げてきました。


月ヶ瀬の茶葉は小ぶりなので、発酵してどんどん香りが出るというよりは、萎凋の時にとても良い香りが出るのだそうです。

なので、その萎凋で出た香りを壊さないように製茶する方法を大事にしています。


揉捻でお茶が砕けてしまうと発酵が促進するので、できるだけ葉っぱを丸ごと揉み込んで、千切れないように。そして、発酵は少し浅めにする。

そうしていくと、萎凋で出た香りは壊れないそうです。


4.冷涼地だからこその製茶方法

月ヶ瀬は山間部にある冷涼地と日があたる暖かい場所があります。朝晩の気温差が激しく、日照時間など四季を通じて気象変動が激しい土地です。しかしそれが、月ヶ瀬の自然のリズムの特徴でもあります。

この自然環境を活かしたお茶づくりの可能性を追及するため、岩田さんは中国雲南省や、インドのアッサムやダージリン、ネパール、スリランカといった海外の茶産地へ行き、実際のお茶づくりを見てきました。


そこで、発酵によって香りがうまれるようなタイプのお茶と、萎凋によって香りがうまれるようなタイプのお茶の、大きく分けて二通りのタイプがあることが分かりました。


べにふうきは、発酵でも香りがうまれるタイプの品種です。一方で、やぶきたは(一番茶に関しては)萎凋で香りを作った方が仕上がりが面白いのだそうです。

あまり切断したり潰したりせず、茶葉が切れないように萎凋し細い形に仕上げていったほうが、萎凋で出た清涼感を感じる香りを残せるお茶になります。


昔は手摘みでしかそういった茶葉を作ることができませんでしたが、破砕がほとんど出ないような揉捻機に切り替えたことで、機械で収穫したものでも形が綺麗で、手摘みと同じような形状で量産できるようになってきました。


最初はなかなかうまくできず、2019年から2020年あたりは移行期間で試行錯誤の連続でした。その後も毎年微修正を繰り返し、今のやり方にも少しずつ慣れてきて、だんだんとコツが分かってきたのだそうです。


5.熟成の難しさと面白さ

2021年のべにふうきは霜の被害をうけたそうで、やや繊細さが出なかったということですが、お茶の甘さが見事に引き出されています。


今のような作り方にしてから、置いた(熟成させた)方が良くなる、熟成が必要だと感じるようになったそうです。春頃になったら、より熟成したものができるといいます。

実は、TEA FOLKSでこれまでお届けした茶葉でも、春摘みの茶葉を夏ぐらいに飲むと、全く味が変わっていたということがありました。


作りたてだけではない、熟成した茶葉にしか出せない味と香りがあります。


岩田さんも、作ってる時は「この香りだ」と思っているそうですが、一か月ぐらいしたら「あの香りはどこいったんだ?」となることがあるそうです。

しかしその後、数か月経ってから雰囲気が出てきて、一年近く経ったら安定してくる、ということもあります。


過去に有機肥料に工夫をして試験的に栽培したこともあるそうですが、やはりアミノ酸やタンパク質系の成分が多いものは香りが劣化しやすく、ミネラル系や炭水化物系の成分多いものは熟成し香りが良くなりやすい、という傾向があります。


作った後の茶葉の状態がどうなっていくのかということは岩田さんもよく観察しているところで、眠っていた茶葉が起きるような感覚を覚える不思議な世界なのだそうです。


6.産地の役割を果たすお茶づくり

和紅茶も、ミルクティーで飲めるような完全にブロークン(粉砕)にした紅茶を好む方もいらっしゃいます。


対して月ヶ瀬健康茶園の茶葉は、どちらかというとストレートに向く茶葉といえます。


岩田さんは、どういう紅茶を作って、どういう役割を果たしていくのかということは、それぞれが考えて実践していくことだろうと思っています。


月ヶ瀬では、岩田さんのお茶づくりを参考にしている茶農家さんもいらっしゃいます。

しかしたとえ先駆者であったとしても、大事なのは「今」と「これから」なのだと岩田さんは言います。


色んな人にお茶を飲んでもらっていると、「ここもうちょっとうまくいってないんじゃない?」など、様々な感想や意見を言われることがあります。

岩田さんは、いつも飲んでくださっているお客様の反応を見ながら、毎回感触を確かめ、よりお客様に喜んでもらえる味を模索し続けてきました。


また、どうやったら機械刈りのものを手摘みのものに近づけることができるか?ということをずっと考え取り組んできた結果、良い機械が見つかり、以前よりも製造を安定させることができるようになりました。


そういったことは全て、岩田さんがこの月ヶ瀬で「今」と「これから」を考え、実践し続ける中で見つけたことです。


まだまだ試行錯誤の途中ですが、飲んでくださってるお客様に、自分たちにしか出せない味わいの茶葉を作り、毎年きちんと届けていくという大事な責任があるのだと、岩田さんは考えています。


7.お茶で自然環境を表現したい

岩田さんは、この月ヶ瀬の自然環境をいかにお茶で表現できるか、ということを考えながらお茶づくりに取り組んでいます。


日本中、世界中の色んな場所や地域でお茶が作られている中で、やはりこの場所で作ってるから、こういう自然環境だからこんなお茶ができた、と言えるものを、どんどん模索していきたい。


だからこそ、在来品種や実生のお茶づくりにこだわってきました。在来品種は、この土地ならではのものであり真似が出来ません。

規格品を作ろうと思ったら、やはり品種物で栽培管理を、ということになってきます。

しかし、やはりコンセプトを持って、月ヶ瀬の自然のリズムの中で作ったらこういうものが出来ました、というものを作っていきたい。


数ある茶園の中で、月ヶ瀬健康茶園は、自分はそういう役なのだと考え、イメージを持ってお茶を作っていきたいと考えているのだそうです。


お茶の世界では50代までは若手だといわれており、岩田さんはその中ではまだまだ若手です。

月ヶ瀬だけでなく、日本の和紅茶づくりを牽引する存在として、岩田さんのこれから益々のご活躍が楽しみです。

記事作成担当:牧園


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