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TEA FOLKS12 中窪製茶園 中窪良太朗さんのご紹介

更新日:4月8日

TEA FOLKS(ティーフォルクス)は2カ月に一度、2茶園のプレミアム和紅茶を茶園のストーリーとともにお届けする定期便サービスです。


2022年2月-3月の第6便では月ヶ瀬健康茶園の「やぶきた」と中窪製茶園の「べにふうき」をお届けしています。お申し込みはこちらから。


目次 1.中窪製茶園「べにふうき」の特徴 2.中窪製茶園の始まりと南山城村 3.デザイナーから茶農家へ 4.廃校舎で製造される地域を活かした紅茶づくり 5.南山城紅茶の始まり 6.中窪製茶園の品種と魅力 7.道の駅との連携 8.南山城村の魅力


1.中窪製茶園「べにふうき」の特徴

中窪製茶園のべにふうきは丁寧に揉まれ、茶葉の形状が綺麗に保たれています。この綺麗な形状を保った茶葉から抽出される紅茶は美しい水色(すいしょく)と、華やかに広がる果実香、甘い味わいを湛えます。


べにふうきは、かつて多田元吉がインドより持ち帰った茶種の実生選抜品種である「べにほまれ」と、農林省を通じて鹿児島県に寄贈されたダージリン系茶種の選抜品種である「枕Cd86」という2つの品種を親にして誕生しました。


1965年から始まったこの交配実生実験によって生まれた枕崎3号は「べにふうき」に名前を変えて1993年に茶農林44号として農林登録、その二年後に種苗登録されました。


べにふうきが正式に紅茶用品種として登録されたことで、全国の茶農家に行き渡るようになると、2000年頃から数度目の和紅茶ブームが起こり始めます。


それほど品種として優れていたべにふうきは和紅茶史上、最も重要な品種の一つといえるでしょう。

2. 中窪製茶園の始まりと南山城村

中窪製茶園は京都府唯一の村である南山城村に位置します。南山城村は京都最南端にあり、北は滋賀の朝宮、南は奈良の月ヶ瀬、西は同じ京都の和束、東は三重の伊賀、と四方を伝統的なお茶どころに囲まれています。


これらの地域は共通して標高が高いため、昼夜の寒暖差が激しく、特に秋が深まってくると濃い霧が頻繁に発生します。このような気候条件は茶葉にとって良質な環境となり、最終的に高い芳香を放つお茶に仕上がります。


また、南山城村は宇治茶の生産において重要な役割を担っています。宇治茶とは、京都、滋賀、奈良、三重の一府三県で生産された茶葉を用いて、最終的に伝統的な宇治製法に則り京都府内で製造されたお茶のことを言います。


南山城村は宇治茶全体の約3割を製造しており、さらに京都府内の年間茶生産量においては、南山城茶がそのうちの凡そ4分の1を占めています。

中窪製茶園の正確な創業時期については不明ですが、恐らく幕末から明治初期にかけての廃藩置県によって、南山城村が京都府に編入された頃の創業になるようです。


第二次世界大戦後に製茶業を始めた農家が多いこの地で、中窪製茶園は100年以上の歴史を誇る特に伝統的なお茶農家といえるでしょう。


宇治茶の伝統的な産地である南山城村ではお茶の他にも時期を分けて、お米やシイタケを栽培する農家が多いようです。中窪製茶園もその例にもれず、創業から3代目の頃まではお茶とお米を栽培する複合農家でした。


しかし、4代目園主の頃にお米の栽培をやめて、お茶を専業にします。加えて、4代目は紅茶の製造を始めるなど、新たな挑戦に取り組んでいきました。


4代目の頃は1人で緑茶と紅茶の製造を並行していましたが、現在は5代目の中窪良太朗さんが紅茶製造を担当しており、二人で作業を分業することで品質の向上にもつながっています。

3.デザイナーから茶農家へ

5代目である良太朗さんは実家の茶業を継ぐ以前は大阪府にある会社でデザイン業に従事していました。元々デザインが好きだった良太朗さんは初め、紙面上で行うグラフィックデザインの道を志望していたそうですが、実家の茶園について広く知ってもらえるようになりたいと考え、後にスキルを活かせるウェブデザイナーとしての道へ進みます。


良太朗さんは大阪でウェブデザイナーとしての経験を積んだ後、20代後半で実家へ戻ることを決意しました。製茶業は職人業的な要素を持つ職種であるため、年を重ねてから始めるよりも、若いうちに技術を習得し、年月をかけて腕を磨き続けたいと考えたのです。


実家に戻ってからも個人でウェブデザイナーの仕事を継続し、製茶業に従事しながら仕事の依頼を引き受けていました。そして、空いた時間には培ったスキルを活かして自社茶園のウェブデザインも手がけるなど、良太朗さんの生活は多忙を極めます。


しかし、製茶とウェブデザイナーの兼業が想像を超えるほど多忙になると、自社茶園のウェブデザインに時間を割く余裕はなくなってしまいました。そのため、良太朗さんは新規のデザイン依頼を引き受けることはやめて、自社茶園の業務に専念することを決めました。


現在では、紅茶作りの傍らで自社茶園のウェブデザインを行い、積極的な情報発信を行うことで中窪製茶園のプロモーションにも努めています。


良太朗さんにはご自身が作る南山城紅茶だけでなく、宇治茶の生産地としても重要な役割を担う南山城村について広く知ってほしいという思いがあります。次章で触れる地域的な取り組みはその意味でとても効果的です。

4.廃校舎で製造される地域を活かした紅茶づくり

中窪製茶園の紅茶は、旧田山小学校という木造平屋建ての廃校を利用した紅茶工場で製造されています。また、旧田山小学校は良太朗さんの母校でもあります。


この廃校では校舎の管理を継続しながら、各管理者が各自の担当する空き教室をテナントとして有効活用しています。中窪製茶園が管理する一室は紅茶工場として活用され、他にもカフェやアトリエなどを営む方もいるそうです。


現在では地元や他地域からの人々が様々に訪れる農村交流の場所としても機能しており、管理者として教室の入室を希望をする方も多くいるようです。しかしながら、テナントとして使える教室は一学年につき一室の合計6室しかないため、入室することは決して容易ではありません。


中窪製茶園は以前から交流のあった前任者の方と世代交代するような形で一室を譲り受け、紅茶工場として活用しています。


中窪製茶園が紅茶作りに取り組み始めたのは先代の4代目の頃からでした。そして、2011年には周囲の茶農家との共同プロジェクトとして旧田山小学校の一室を利用した紅茶製造を開始しました。


しかし、紅茶製造にさける稼働が限られていたことから周囲の茶農家は徐々にこのプロジェクトから撤退していきました。最終的に残った中窪製茶園が単独で教室とプロジェクトを引き継ぎ、現在に至ります。


かつては4代目が緑茶と紅茶の製造を一人で行っていましたが、良太朗さんが5代目を継ぐと、4代目が緑茶製造、良太朗さんが紅茶製造というように分業が可能となりました。


緑茶と紅茶の分業体制を確立し、紅茶の品質をさらに向上させていくことで、褒められることも多くなったと良太朗さんは言います。

5.南山城紅茶の始まり

前章で述べた通り、中窪製茶園が紅茶を作り始めたのは4代目の頃からでした。そして2011年には中窪製茶園と周囲の茶農家が共同で南山城紅茶の製造プロジェクトを始動します。


しかし、中窪製茶園以外の茶農家が徐々にプロジェクトから撤退したことで、中窪製茶園が単独でプロジェクトを引き継ぎました。


デザイナーを引退した良太朗さんは実家に戻り、5代目として茶業に従事します。学生時代から家業の製茶を手伝ってきた良太朗さんは、その当時の延長として始め、現在までお茶作りの感覚や技術を磨いてきました。


また、緑茶と紅茶の分業が可能となったため、良太朗さんの就農後は南山城紅茶の品質もさらに向上しています。


中窪製茶園では茶葉を大切に扱い、その形状を可能な限り保持することに強いこだわりがあります。そして、抽出すると茶葉本来の形状に戻ることを理想としています。これは「茶葉の形状が保たれたお茶の味こそが、その茶葉本来の味わいである。」という4代目の緑茶作りに対する思いの顕れであり、良太朗さんの作る紅茶にもその考えが強く反映されています。そのため、中窪製茶園の紅茶は全てホールリーフの形状で製造される点が大きな特徴です。


また、良太朗さんは毎年紅茶製造における課題を設定して、それを克服することで飽くなき挑戦を続けています。その甲斐もあり、若手の茶農家として良太朗さん個人や中窪製茶園に対する注目が高まっています。最近ではメディアへの露出も増え、南山城紅茶の取扱店も増加したそうです。

6.中窪製茶園の品種と魅力

現在、中窪製茶園では紅茶に用いる品種として、べにふうき、やぶきた、おくみどり、さえあかり、在来の5品種を栽培しています。緑茶ではそこに、おくひかりが加わります。


べにふうきは冒頭でも述べたように紅茶用品種として非常に優れており、人気があります。一方、良太朗さんは伝統的に緑茶に用いられてきた「やぶきた」の紅茶にも注目しているようです。やぶきたから作られる紅茶はべにふうきのそれとは製造方法が全く異なり、味わいも別のものとなります。


このように方向性が全く異なる紅茶を好みに合わせて選ぶことができるのは中窪製茶園の魅力の一つです。


また、新たな栽培品種として京都にゆかりのある「さみどり」を新植する様子など、茶農家ならではの情報が公式ホームページで発信されています。こうした積極的な情報発信も、消費者がお茶を身近に感じるための大きな魅力となっています。


7.道の駅との連携

南山城村には「お茶の駅 みなみやましろ村」という道の駅があります。2017年に開かれたばかりのこの道の駅では「村茶」を使った多様なスイーツやドリンクを楽しむことができます。


さらに、毎年秋になると紅茶フェアが開催されます。そこでは中窪製茶園と道の駅が共同で開発した紅茶のパウンドケーキやソフトクリーム、パフェ、プリンなどが提供されています。


多様なお茶スイーツやドリンクのラインナップはまさにお茶の村ならではのものです。

8.南山城村の魅力

良太朗さんの語る南山城村の魅力はまず道の駅です。毎年秋になると前章でも触れた紅茶フェアが開催され、中窪製茶園の紅茶を使った様々なコラボ商品が販売されます。

また、南山城村は月ヶ瀬や和束などの茶産地の中心にあるため、南山城村を起点に様々なお茶どころを巡ってみることもおすすめです。笠置山地や奈良盆地の豊かな自然を楽しむことも良いでしょう。


そして、南山城村を訪れる際にはぜひ旧田山小学校にも立ち寄ってみてください。茶畑に囲まれた木造校舎のカフェで、南山城紅茶をいただいて過ごすひと時は至福の時間となるに違いありません。


記事作成担当:馬原


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