デジタル技術が発達し、デジタルがリアルな世の中を包み込むような世界になったいま、お客様の様々な行動や思考がある程度データとしてわかるようになっています。そういったデータを活用することで、商品を買ってもらって終わるのではなく、お客様の体験をどんどん改善するビジネスをしましょうという話が書かれています。
(お客様には茶葉の感想記入やインタビューにご協力頂き、いつも本当にありがとうございます。)
その藤井保文さんの最新刊『ジャーニーシフト』を発売前に読ませて頂く機会を頂きましたので、感想を兼ねて、TOKYO TEA BLENDERSのカスタマージャーニーについてこれまで考えてきたことを投稿したいと思います。
『アフターデジタル』の内容は、ある人からみれば「モノ消費ではなくコト消費ってことでしょ?体験を売るんでしょ」という話に集約されてしまうかもしれません。確かに表面上はその通りなのですが、本質は少し異なります。
例えば、紅茶の茶葉を売るのがモノ消費で、紅茶を美味しく淹れる体験を売るのがコト消費と言えます。しかし、『アフターデジタル』や『ジャーニーシフト』に書かれているUX=ユーザー体験とはそういった単発のコト消費のことではありません。
それでは、TOKYO TEA BLENDERSの提供している和紅茶サブスクTEA FOLKSではどのようなユーザー体験を想定しているか記載してみたいと思います。
●どのような方を対象としているのか
私たちがサービス対象としている方々は紅茶が好きな方、特に日本紅茶協会のティーインストラクターを持たれている方など、比較的紅茶愛が強いお客様です。
紅茶愛が強くて、スーパーに売っている紅茶以外のものにも手を出しているけれど、国産の紅茶、和紅茶はどれを選べばよいかイマイチわからない、そんな方がお客様となって頂いています。
紅茶愛がそこまで強くない、または紅茶は大好きだけれど定期便となるとちょっと躊躇してしまう、そのような方には紅茶の歴史や美味しい淹れ方など、とても貴重な情報が詰まったメルマガをご案内し、紅茶愛を高めて頂いています。
●利便性の提供価値
TEA FOLKSに加入頂いたお客様には、2か月に一度、2茶園分の和紅茶をお届けします。当社でお取り扱いしている茶園さんは、先般ロンドンで開催された世界の品評会でも世界一をとるような茶園さんが揃っており、味と品質に絶大な自信をもっています。
和紅茶はまだ情報量が多くないので「選び方がわからない」という“不便”に対して、家にいながらにして、圧倒的に高品質な茶葉と出会える利便性をお届けしています。
●意味性の提供価値
サブスクには、生産者さんの情報が書かれたニュースレターと美味しい淹れ方や品種の解説が書かれたポストカードが同封されています。
つまり、TEA FOLKSの会員さんは、回を重ねるごとに、トップクラスの和紅茶の生産者さんに詳しくなり、雑誌の和紅茶特集をみれば「あ、この人知ってるー」状態になります。 (生産者さんへの共感)
また、できるだけ取り扱ったことがない品種をお届けすることで、和紅茶の味の違いにも気づいて頂けるようになっています。 (品種への興味=嗜好性の強化)
会員さんには、週に一度のメルマガで、取材で見たこと、聞いたことなど、運営の裏側をお伝えしています。
(二カ月に一度のお届け以外のタッチポイント)
さらに、サブスク開始から1年が経ったお客様だけが入れるTEA FOLKS ADVANCEにも数名ずつご招待し、Facebookのコミュニティ限定投稿で次回便のイラスト先出しや、商品化のご相談などもさせて頂いています。
(運営に近い仲間づくり)
こうして、和紅茶に詳しくなるだけでなく「今年の●●園のお茶は去年に比べてこうなっている」といった経年の変化も楽しめるようになっているのではないかと思います。
この「好き」という感情はどんどん高まっていて、この秋に久々にリアルに開催されるようになった和紅茶の販売会では、生産者さんのブースでボランティアでお手伝いをしたいという方が続出して、ボランティアをお断りしないといけないくらいでした。
●『ジャーニーシフト』に書かれていること
本書P.124には、“顧客提供価値が、「モノや情報の提供」「瞬間的な道具としての価値」から、ありたい成功状態を実現させ、行動を可能にさせる「行動支援」に変わっている。“と書かれています。
「モノ消費ではなくコト消費」と言えば、そのとおりなのですが、その“コト”というのは単発の体験を指しているのではありません。お客様のありたい姿を想定し、デジタルとリアルの両面から常にサービスをアップデートしながら行動支援をしていくことが重要だと本書には書かれています。
『UXグロースモデル』ではユーザー体験設計の方法論がとても詳しく書かれていました。本書ではインドネシアなどの海外事例や、Web3/DAOといった最新事例も取り入れて、利便性と意味性を踏まえた行動支援の重要性が説かれていて大変参考になりました。
当社のようなスモールビジネスであっても、嗜好性の強い商材を扱うサブスクモデルだからこそ、ジャーニーシフトを意識する必要性をあらためて感じました。
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